建築時の設計図などの図面関係が無いという物件は中古住宅ではよくあります。特に築年数がそれなりに経っている住宅なんかだと、図面自体が残っていることが珍しいことすらあります。
たまに図面が無い物件は買わない方がいいという意見も聞きますが、必ずしもダメだとは限りません。図面が無くても銀行融資が出なくなることもありませんし、決定的にダメな理由があるわけではありません。
しかし、無いことによって困るときというのはどんな時でしょうか?ここでは、そんな中古住宅で図面が無いと困ることについて説明していきます。
この記事で分かること
- 中古住宅で図面が残っていない理由
- 図面が無いと実際に困る場面
- 図面を入手する5つの方法と費用
- 図面より無いと困る「検査済証」
- 中古マンションの図面がある場所
この記事を読むことで、図面が無い中古住宅を買っていいかどうかを、自分の状況に当てはめて判断できるようになります。
中古住宅の半分くらいが図面はない?

実際に取引をしている実感として、半分以上は図面が無いのではないでしょうか?
中古マンションでは管理組合で保管されていることが多く、実在することも多いですが、中古戸建てについては売主の方が残しているかどうかによります。時間がたてば捨ててしまったり、紛失してしまうリスクは中古戸建の方が高くなります。
しかし、そもそも図面が無くて困るのはリフォームやリノベーションをする時です。図面がない場合はもう一度寸法を測り直したり、図面を書き起こす手間が発生します。
その分費用が増えたりしますが、リフォームの場合は採寸して図面を起こすのにそこまで時間がかかるわけではないので、費用的には知れています。中には無料で対応してくれる業者もあるくらいです。
そもそも「図面」とは何を指すのか
図面が無いという話をするときに、そもそも何を指しているのかが人によってバラバラなことがあります。中古住宅の取引で出てくる図面は、大きく次の4つに分かれます。
- 設計図書:意匠図、構造図、設備図など、その建物をどう建てるかを描いた一式
- 確認申請図面:役所や検査機関に建築確認を申請したときに添付した図面
- 竣工図:実際に建った状態に合わせて修正された図面
- 建物図面・各階平面図:登記のときに法務局へ提出された図面
リフォームやリノベーションで本当に欲しいのは、上の3つです。壁の中がどうなっているか、どこに構造上抜けない柱や壁があるかは、意匠図と構造図を見ないと分かりません。
一方で、法務局にある建物図面・各階平面図は、建物の位置と各階の形・床面積を示すものです。間取りの詳細や構造、配管の経路までは分かりません。「登記の図面があるから大丈夫」とはならないので、ここは分けて考えてください。
そしてもう一つ、注意しておきたいことがあります。物件広告に載っている間取り図は建築図面ではありません。販売のために作られたもので、寸法が正確とは限らず、壁の中の情報も入っていません。間取り図があることを「図面がある」と受け取ってしまうと、リフォームの打ち合わせで話が食い違います。
設計図面が無くて困ることは?
それでは、図面が無くて困るのは実際どんなことなのでしょうか?
壁をめくってみないと分からない
表面的なリフォームであればそれでよくても、間取りを変更したりするようなリノベーション工事を行う時は、図面の有無が影響してきます。通し柱の場所や筋交(すじかい)の場所は図面を見てみないと分からないからです。
そこで図面の無い住宅でリノベーションをする場合は、もともと抜こうと思っていた壁に筋交が入っていて抜くことが出来ないといった、解体してみないと分からないことが多く発生します。
フラット35を利用できない可能性がある
勤続年数や健康状態に問題があっても借りられる住宅ローンとして、多く利用されているフラット35。なぜ借りられるのかというと、銀行が「人」を見て貸すのに対して、フラット35は「物件」を見て貸すと言われているからです。
しかし逆を言えば、「人」に対しては若干甘いフラット35ですが、「物件」に対しては厳しいのです。フラット35を利用して住宅ローンを借りる時は、物件の検査が行われ、その検査に合格することが必須条件となってきます。しかし、この時に図面が無いと、全くダメという訳ではないですが、検査に合格するためのハードルは高くなります。
耐震診断を受けられない
木造であればそこまで問題になりませんが、鉄骨造やRCなど非木造系の建物の場合、耐震診断や耐震改修が困難になります。
耐震診断をするにはそれこそ車を買うのと同じくらいの費用がかかってしまうので、現実的ではありません。
増築されているかどうかが分からない
図面と実際の建物が違うケースもあります。あとから増築されているのに確認申請を出しておらず、登記もされていないという物件は、実際に出てきます。
図面が無いと、そもそも増築の有無を突き合わせる材料がありません。増築部分が建築基準法に適合していない場合、住宅ローンの審査に影響したり、将来売るときに買主から敬遠されたりします。
内覧のときに「この部屋、あとから足したように見える」と感じたら、その場で判断せず、図面と登記の内容を確認してから進めてください。
図面がないときの入手方法
「無い」と言われた図面が、探すと出てくることは珍しくありません。売主が持っていないだけで、別のところに残っていることがあるからです。手に入る可能性が高い順に見ていきます。
まずは売主と、前の所有者をたどる
仲介会社を通して、売主に手元の資料をひととおり出してもらってください。引っ越しの荷物にまぎれていたり、押し入れの奥から確認申請の副本ごと出てくることがあります。
所有者が何度か替わっている物件では、売主が最初の持ち主ではないため、そもそも渡されていないこともあります。その場合は次の方法に移ります。
建てた会社に問い合わせる
建てたハウスメーカーや工務店、設計事務所が今も営業していれば、図面が保管されている可能性があります。ハウスメーカーは長期保管している会社が多く、有償で再発行してもらえることもあります。
リフォーム履歴がある場合は、そのリフォームをした会社にも当たってください。直近の改修図面のほうが、今の建物の状態に近いことがあります。
法務局で「建物図面・各階平面図」を取る
法務局にある建物図面と各階平面図は、誰でも請求できます。所有者でなくても取れます。
手数料は次のとおりです(令和7年4月1日から)。
- 書面請求:1個の建物につき500円
- オンライン請求・送付:470円
- オンライン請求・窓口交付:440円
ただし先に書いたとおり、これで分かるのは建物の位置と各階の形、床面積までです。間取りや構造までは分かりません。それでも、登記された建物の形と現況が合っているかを確かめる材料にはなります。古い建物では、そもそも備え付けが無いこともあります。
出典:法務省「主な手数料一覧(令和7年4月1日~)」
役所で「建築計画概要書」と「台帳記載事項証明書」を取る
建築確認を出したときの概要は、役所に記録が残っています。建築計画概要書は誰でも閲覧でき、建築主や設計者、敷地面積、建築面積、確認済証や検査済証の番号などが分かります。
名古屋市の場合、建築計画概要書は平成8年4月1日以降に確認申請を受け付けたもの、処分等の概要書は平成4年4月1日以降のものが閲覧できます。建築確認台帳記載事項証明書は、平成4年4月1日以降に確認申請され確認済証が交付されたものについて、確認済証・中間検査合格証・検査済証の番号と交付年月日を証明してもらえます。
対象になる年度や手数料は自治体によって違うので、物件のある市区町村の建築指導の窓口に確認してください。
ここで分かるのは設計の詳細ではありませんが、「建築確認と完了検査を受けているか」を確かめられます。これが後で効いてきます。
出典:名古屋市「建築計画概要書等の閲覧」「建築確認台帳記載事項証明」
マンションなら管理組合に当たる
中古マンションの場合、竣工図が管理組合に保管されていることがほとんどです。管理会社を通して閲覧やコピーを依頼できます。
専有部の給排水管や電気配線の経路は、この竣工図を見ないと分かりません。リノベーションで水回りの位置を動かしたいときは、契約前に見せてもらってください。
それでも出てこないときは作り直す
どこにも残っていない場合は、現況を測って図面を起こすことになります。
リフォーム会社が採寸して簡易的な平面図を作るだけなら、見積もりの一環として無料で対応してくれることもあります。一方で、構造まで踏み込んだ図面を建築士に依頼して復元する場合は、建物の規模や必要な精度によって費用が変わります。金額の幅が大きいので、何のために必要なのかを先に伝えて見積もりを取ってください。
中古マンションの図面はどこにあるのか
戸建てとマンションでは、図面の探し方がまったく違います。マンションは管理組合という保管者がいるからです。
マンションで確認しておきたい図面は次のとおりです。
- 竣工図:建物全体の意匠・構造・設備。管理組合が保管していることが多い
- 専有部の平面図:間取りと寸法
- 給排水設備図:配管の経路と材質。リノベーションで最も重要
- 販売時のパンフレット:売主が持っていれば、間取りと設備の仕様が分かる
気をつけたいのは、管理がうまく回っていないマンションでは、この竣工図が見当たらないことがある点です。書類の保管状態は、そのまま管理組合の状態を映します。図面が出てこないマンションは、修繕の履歴や長期修繕計画も整っていないことが多くなります。
裏を返せば、図面がすぐに出てくるマンションは、管理がしっかりしている可能性が高いということです。
管理状態そのものを確かめたいなら、重要事項調査報告書から積立金の残高や長期修繕計画の中身まで見ておくと判断しやすくなります。
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図面の無い中古住宅はインスペクションは受けられるか?
2018年4月の改正宅建業法でインスペクション(建物状況調査)のあっせんが取引の中で扱われるようになり、利用が出来るか疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。しかしインスペクションについては簡易的な図面があれば出来るので、特に問題になることはありません。
インスペクションで問題になるのは、図面の有無よりも、その建物の構造的に床下点検口などが無かったりする場合です。その場合、実際に床をめくらないといけないので、床下の状態が分からないということが起こります。
無いと困るのは「検査済証」
ここまで見てきたように、設計図面が無いと困ることは確かにありますが、人によっては特に影響してこないこともあります。図面が無いことが困るかどうかというのは、その時々の状況になるのではないかと思います。
しかし「検査済証」はそうはいきません。建築図面は建築士の力を借りて費用をかけるとこが出来れば復元は出来ます。しかし検査済証は発行されるタイミングが一度しかなく、再発行を受けることが出来ない書類なのです。
検査済証は何かというと、まず建築物を建てる時はこのような物件を建てますよと役所に申請するのが「建築確認申請」。そして役所がその計画に対してOKをだすのが「建築確認済証」。この建築確認が無いと基本建物は建築できません。
そして実際に建築が完成したタイミングで、最後に計画通りの建物が建ったかを検査をして発行されるのが「検査済証」。もちろん役所にも「検査済証を発効したこと」の控えは残していますが、ここ名古屋市であれば20年しか保管してありません。
しかも、この完了検査は法律上定められたものではなく、昔の物件で言えば取得率は20%と言われています。
計画通り建てるのは当たり前じゃないの?と思うこともあるかもしれませんが、昔はそうでもなかったのです(今でもですが)。筆者が経験したケースだと、建築確認申請に添付した図面とは明らかに違う内容の図面がもう一部出てきたことすらあります。(確信犯的な違法建築)
つまり検査済証が無い住宅と言うのは、そもそも役所に申請をして許可を得た通りの住宅を建築したという証明が無い、という状態になるのです。このきちんと建築されたかどうかの証明が出来ないことが、色々な場面で影響してきます。
検査済証が無くて困ることは?

検査済証が無くて、まず困るのは耐震関係です。
住宅ローン控除については、以前は「木造なら20年以内、鉄骨やRC造なら25年以内」という築年数の要件がありました。この要件は2022年(令和4年)の税制改正で廃止されています。
いまの要件は、登記簿上の建築日付が昭和57年1月1日以後であることです。この日以後に建てられた住宅であれば、築年数にかかわらず住宅ローン控除の対象になります。
問題は、昭和56年12月31日以前に建てられた住宅です。この場合は、次のいずれかの書類で新耐震基準に適合していることを証明しなければいけません。
- 耐震基準適合証明書(建築士等が発行。取得前2年以内に調査を完了したもの)
- 建設住宅性能評価書(耐震等級1以上。取得前2年以内に評価されたもの)
- 既存住宅売買瑕疵担保責任保険付保証明書(取得前2年以内に契約したもの)
そして、この3つのいずれを取るにも耐震診断や現地調査が必要になります。検査済証が無いということは、申請どおりに建てられた証明が無いということなので、そもそも適合しているかどうかの前提が崩れます。診断のハードルも費用も上がります。
つまり、検査を受ければ高い確率で適合しそうな建物であっても、この検査済証が無いばかりに、住宅ローン控除をはじめとする税制優遇が利用しにくくなるということになります。
もちろん、方法がないわけではありません。耐震診断を受けて現行の耐震基準に適合されていることが証明されれば良いのですが、マンションの場合は、全体の耐震診断が必要になり費用も戸建と比べて多くかかるためハードルが高くなります。また戸建であっても、検査済証もなくてさらに図面もないとなると、耐震診断自体にかなりのお金と手間がかかるようになります。
他にも「住宅取得時の贈与税の非課税制度」を利用したい時は、住宅ローン控除が適用される物件と同じ条件が適用されるので、親からの贈与を自己資金に考えている方であれば注意が必要になります。
出典:国税庁「No.1211-3 中古住宅を取得し、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)」
図面が無くて困るのは状況次第
いかがでしたでしょうか?
図面が無ければ絶対いけない、という訳では無いですが、あるに越したことはありません。しかし、多くの中古住宅が図面が残っていないことを考えると、ご自身の状況を考えながら判断していかなければいけません。
判断の分かれ目を整理すると、次のようになります。
- 表面的なリフォームで済ませるなら、図面が無くても大きな支障は出にくい
- 間取りを変えるリノベーションをするなら、解体してみないと分からない部分が増える
- フラット35や税制優遇を使いたいなら、図面より検査済証の有無を先に確認する
- 昭和56年12月31日以前の建物なら、耐震の証明が取れるかどうかが分かれ目になる
中古住宅の実績が豊富な業者や担当者であれば、このあたりのことは熟知していると思いますので、ご自身の状況を共有し、状況に見合った物件探しのお手伝いをしてもらうことが重要になります。
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よくある質問
家の図面がないのですが、どうしたらいいですか?
売主、建てた会社、法務局、役所の順に当たってください。法務局では建物図面と各階平面図が誰でも取れます。役所では建築計画概要書を閲覧できます。それでも出てこない場合は、現況を測って作り直すことになります。
法務局で建物図面は誰でも取れますか?
取れます。所有者でなくても請求できます。手数料は書面請求で1個の建物につき500円、オンライン請求なら送付470円、窓口交付440円です(令和7年4月1日から)。
家の図面を作るのにかかる費用はいくらですか?
何のための図面かで変わります。リフォームの見積もりに使う簡易的な平面図であれば、リフォーム会社が無料で採寸してくれることもあります。構造まで踏み込んだ図面を建築士に復元してもらう場合は、建物の規模と必要な精度によって費用が変わるので、用途を伝えて見積もりを取ってください。
中古マンションの図面はどこでもらえますか?
管理組合が竣工図を保管していることがほとんどです。管理会社を通して閲覧やコピーを依頼します。専有部の配管や配線の経路は、この竣工図でしか確認できません。
図面がない中古住宅は買わない方がいいですか?
図面が無いというだけで避ける必要はありません。中古住宅の半分以上は図面が残っていないというのが実感です。それよりも検査済証があるか、増築されていないか、耐震の証明が取れるかを先に確認してください。
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