住宅ローンを借りる上で、変動金利か固定金利で迷う方は多いかもしれません。見た目の金利は変動金利が安いものの、固定金利の方がリスクも少ない気もしますが、一体どっちがいいのでしょうか。
ここでは住宅ローンの特に変動金利の注意点をご説明します。資金計画を立てる時にどちらの金利で計算したほうがいいか、住宅ローンの契約でどちらにした方がいいか迷っているのなら是非ご一読下さい。
全期間固定を選ぶ人は1割しかいない
住宅金融支援機構が実施している「住宅ローン利用者調査」の最新版(2026年1月調査、回答数1,237件)では、実際に借りた人が選んだ金利タイプは次のようになっています。
- 変動型 75.0%(前回調査比 ▲4.0ポイント)
- 固定期間選択型 14.9%(+2.7ポイント)
- 全期間固定型 10.1%(+1.3ポイント)
(出典:住宅金融支援機構「住宅ローン利用者の実態調査結果(2026年1月調査)」)
金利が上がり始めたことで固定を選ぶ人が増えていますが、それでも4人に3人は変動型です。
そして全期間固定型は1割しかいません。
ほとんどの人が仕組みを理解していない
同じ調査で、変動型と固定期間選択型を選んだ1,112人に、金利リスクの理解度を聞いています。
「十分に理解している」と答えた人の割合は次のとおりです。
- 適用金利がどのルールで変わるか 21.0%
- 5年ルール・125%ルール 17.0%
- 金利が上がると返済額がどれくらい増えるか 15.1%
- 優遇金利が適用されなくなる条件 14.6%
逆に「理解しているか少し不安」「よく理解していない」「全く理解していない」を合計すると、42.6%から55.6%にのぼります。
実際に住宅ローンを借りて住宅を購入しているのに、半分近くの人が変動金利の仕組みを分かっていないということです。
返済額が増えたときの対応を決めていない
同じ調査では、金利上昇で毎月の返済額が増えた場合にどうするかも聞いています。
- 月1万円増 返済を継続できる 58.8%/見当がつかない 15.5%
- 月3万円増 返済を継続できる 24.2%/見当がつかない 27.2%
- 月5万円増 返済を継続できる 12.8%/見当がつかない 38.4%
月5万円増えたら、4割近くの人が「どうするか分からない」と答えています。
金利が1%上がれば、4,000万円を35年で借りている場合の返済額は月2万円ほど増えます。
2%上がれば4万円台です。
決して現実離れした数字ではありません。
比較していない人が3人に2人
もう一つ気になる数字があります。
住宅ローンを選ぶときに比較した数を聞いたところ、「1つだけ(現在借りているローンのみ)」と答えた人が65.6%でした。
そして借入計画で最も参考になった相談先は「住宅・販売事業者」が42.6%で最多です。
物件を売る側にすすめられたローンを、比較せずにそのまま借りているという姿が見えてきます。
変動金利型の仕組み
まず「変動金利型」とは、市中の金利動向によって適用金利が変わり、返済額もその都度変わります。そしてこの変動型金利には大きく分けて二つのルールが存在します。
①5年ルール
一般的に変動金利型といっても金利が見直されるのは年2回です。通常であれば、金利が上がれば支払額も増えるのですが、半年ごとに支払い額が変わるのは色々と返済する方としても戸惑うだろうということで、ほとんどの銀行では5年ルールというものを設定しています。
この5年ルールとは途中でたとえ金利が上昇したとしても、5年間は支払額はそのままにしましょうというものです。これだけを聞くと、なんだそんなことかと思うかもしれませんが、そうではありません。
まず月々の支払いの内訳は、元本と金利の合計です。例えば月々の支払が10万円だったとすると、元本の支払いが3万円で金利が7万円というようになります。(※ちなみにローンの支払い始めは金利の方が多く、徐々に元本も多くなっていくというカーブを描きます)
そしてこの5年ルールで支払額が10万円で変わらなかったとしても、金利が上昇した場合は、元本が2万円で利息が8万円になるということが起こるわけです。つまり返済額は変わらないものの、途中で金利が上昇すれば、内訳が見直されて気がつけば元本が当初の予定程減っていないという結果になります。
②1.25倍ルール
仮に5年ルール適用期間中に金利が上昇し、次の5年の支払額が急上昇し、「来月から1.5倍になります」といわれても困りますよね?そうならないように一般的に銀行ではもう一つの「1.25倍ルール」というものを設けています。
これは、返済額見直しの際に急激に返済額が上昇してしまいそうな場合には、上昇率の上限を1.25倍までにしましょうというルールです。
これだけ聞くと、「なんだ親切じゃないか」と思うかもしれませんが、そうではありません。内訳を見ると元金の返済が減って、利息が増えているだけです。
つまり金利が急上昇してしまうと、毎月きちんと返済しているのに元金がちっとも減っていないということもありえるわけです。
変動金利の最大のリスク
最悪のケースで、このまま金利が上昇し続けると最後に返しきれなかった元金や未払い利息が残っている場合も考えられます。そうした場合、一般的には最後(35年ローンであれば35年後に)に一括返済を求められるようになります。
今でこそ、銀行によっては見直し毎に返済額を変えたり、1.25倍ルールを撤廃した住宅ローンもあります。変動金利は見た目の金利も安く、当初の月々の返済は抑えられますが、支払額の返済のリスクが生じるということを覚えておいてください。
固定期間選択型の仕組み
固定期間選択型は、特約期間中は固定金利ですが、その後は変動金利に変わるか、再度固定期間選択型のどちらかを選ぶタイプになります。
2年や3年といった固定期間が短いものが金利が安く、5年10年と特約期間が長くなるにつれて金利は高くなります。また固定期間選択型には、変動金利型にあるような1.25倍ルールはありません。
そして固定期間選択型の金利は「キャンペーン適用金利」が適用されていることも多く、特約期間が終わる時になくなるキャンペーン分の金利と、金利上昇が重なった場合、一気に月々の支払額が3、4割増という事態も考えられます。
たとえ金利が上昇していなくても、キャンペーン金利適用がなくなるだけで実際の支払額は結構増えます。変動金利型のような「未払い金利」のリスクは少ないものの、支払額の変動は考えておかなければいけません。
しかしながら約5割の人は返済額増額への対応策はなしと答えています。名前こそ固定金利のような感じがしますが、どちらかといえば変動金利に近い側面も持ち合わせていることを覚えておいてください。
全期間固定型であれば支払額は変わらない
それに対して約1割強と不人気ながらも、全期間固定には支払額の変動は一切ありません。金利が今以上に下がれば損をするかもしれませんが、今の状況でなかなか考えにくいです。
その分金利もほかのタイプと比べて高くなりますが、それぞれのメリット・デメリットを理解して納得した上で選ぶべきだと考えています。
先のアンケート結果における割合を見た時には意外な感じがしましたが、当社では全期間固定型の割合が一番多いような感じがします。逆に変動型金利や固定期間選択型を選ぶ人は、借入自体が少ない人や期間が短い人が多いというのが実感です。
不動産会社は売ってしまえばおしまい
なぜ世間的な割合と当社の割合がこうも違うのかという理由が気になるところです。おそらく私の予想では、不動産会社が売りやすいように変動金利型や固定期間選択型を勧めているのではないかと思います。
金利が安い方が、見た目の収支計画にはプラスになりますし、返済比率にも余裕が出るのでより大きな予算の物件をあてがうことが出来ます。
新築業者であれば、建築後10年間、建物に対する保証責任は発生しますが、住宅ローンに関しては何の責任も持ちません。たとえ住宅ローンが遅延するなどのローン事故が発生しても、不動産業者としては関係ないのです。
不動産仲介業者などに資金的な相談をしたときに、十分な説明がないままに金利の安い変動型金利や固定期間選択型の住宅ローンを勧めてくる業者には注意が必要です。
まとめ
いかがでしょうか?一つ最後に覚えておいて欲しいのが、変動金利は借り手がリスクを負い、固定金利は貸し手がリスクを負うと言われています。
変動金利は確かに見た目の数字は良くなりますが、リスクをしっかりと理解した上で、ご自身にあった金利種類を選んでいただければと思います。
金利はすでに動き始めている
この記事を書いている時点で、金利は上昇の局面に入っています。
日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後も段階的に政策金利を引き上げてきました。
2026年6月16日には無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.0%程度で推移するよう促す方針が決定され、7月31日もこの水準が維持されています(出典:日本銀行「金融市場調節方針に関する公表文」)。
変動金利はこの政策金利に連動します。
つまりこれまで「動かないもの」として扱われてきた変動金利が、実際に動く前提になったということです。
ここからは、いま変動金利で借りている方、これから借りる方それぞれにお伝えします。
変動と固定の差は、いまこれだけ開いている
2026年8月時点で、変動金利と35年固定金利の差は次のようになっています。
愛知県・借入4,000万円・35年・元利均等返済・自己資金500万円の条件で試算した金額です。
- 変動金利 年0.945% 毎月111,892円 総返済額4,699万円
- 35年固定 年3.640% 毎月168,578円 総返済額7,080万円
毎月の差は56,686円、総返済額の差は2,381万円です(出典:モゲチェック 2026年8月時点の掲載金利で試算)。
固定金利は、将来上がるかもしれない分をあらかじめ織り込んだ金利です。
いまはその織り込みが先行しすぎていて、変動金利との差が大きく開いています。
変動金利が固定金利と同じ3.640%に届くには、政策金利が現在の1.0%程度からさらに2.7%近く上がる必要があります。
そこまで上がる可能性がどれだけあるかを考えると、私はどちらかといえば変動金利を選ぶという立場です。
ただしこれは「変動金利なら安心」という意味ではありません。
変動金利は上がる可能性がある商品です。
だからこそ金利が1%上がったときの返済額を出して、それでも払える金額に借入を抑えることがセットになります。
この条件を満たせないのであれば、選ぶべきは固定金利ではなく、借入額を減らすことです。
これから借りる方へ
金利が1%上がったときの返済額を出してください。
その金額でも払えるのであれば、変動金利は選択肢になります。
払えないのであれば、借入額を減らすか、固定金利にするかのどちらかです。
いまの返済額で判断しないでください。
すでに変動金利で借りている方へ
まず、ご自身の金利がいつ見直されるのかを確認してください。
多くの商品では年2回、4月と10月に金利が見直されます。
そのうえで、5年ルールと1.25倍ルールがある商品かどうかを確認してください。
これらのルールは返済額の上昇を抑えますが、利息が消えるわけではありません。
抑えられた分は未払利息として残り、最後にまとめて請求されることがあります。
借り換えを考えるときの目安
金利差、残りの期間、残債の額の3つで決まります。
借り換えには数十万円の諸費用がかかりますので、その費用を上回る効果があるかどうかを計算してください。
金利が上がってから動くより、上がる前に検討しておくほうが選択肢は多くなります。
よくある質問
変動金利はいま選んでも大丈夫ですか?
2026年8月時点では、変動と35年固定の金利差が2.7%近くあります。
私はどちらかといえば変動金利をおすすめする立場です。
ただし金利が1%上がったときの返済額を出して、それでも払えるかどうかで判断してください。
払えないのであれば、その借入額が身の丈に合っていないということです。
5年ルールと1.25倍ルールがあれば安心ですか?
返済額の上昇は抑えられますが、利息そのものが減るわけではありません。
抑えられた分は未払利息として残り、最後に請求されることがあります。
先送りであって、免除ではありません。
金利はいつ見直されますか?
多くの商品で年2回、4月と10月に見直されます。
返済額の変更は5年ごとという商品が一般的です。
ご自身の商品がどうなっているかは、契約書か金融機関で確認してください。
固定金利に借り換えたほうがいいですか?
2026年8月時点の固定金利は3%台後半の水準です。
変動金利が0.9%台であることを考えると、いま固定に借り換えるとその時点で返済額が大きく増えます。
借り換えを考えるなら、まずは変動金利どうしで金利の低い金融機関へ移せないかを検討してください。
いずれの場合も借り換えには諸費用がかかりますので、その費用を上回る効果があるかを計算してください。
金利が上がったら返済額はどれくらい増えますか?
借入額と残りの期間によります。
まずはご自身の条件で、1%上がったときの返済額を計算してみてください。
その数字を見てから、対策を考えるのが順番です。
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