フラット35は国土交通省と財務省が共同で運営をしている「住宅金融支援機構」が取り扱っている商品です。住宅金融支援機構が直接融資を行うのではなく、銀行やノンバンク系の金融機関などが代理店となり、融資の受付をしています。
フラット35は長期間(全期間)金利が固定される商品です。
日本銀行は2024年3月にマイナス金利政策を解除し、その後も政策金利を引き上げてきました。
2026年6月16日には無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.0%程度とする方針が決定され、7月31日もこの水準が維持されています(出典:日本銀行「金融市場調節方針に関する公表文」)。
金利が上がっていく局面では、返済額が変わらないという性質そのものが価値になります。
ここでは、そのフラット35の魅力と、良く質問を受ける旧耐震の中古マンションでの取り扱いについて説明していきます。これから中古マンションの購入を検討している方で、特に旧耐震の物件も検討にしている方はお役に立てていただけると思います。
フラット35はこう変わってきた
フラット35というと、何となくですが銀行で借りれない人が借りるローンというような目で見られることもありました。しかし、低金利時代において長期間固定金利で借りられるという合理性と、常に改良され使いやすくなってきており、銀行が扱う住宅ローンと比べても遜色がないくらい、使い勝手のよいローンに変わってきました。
まずは直近の改正内容を簡単に振り返っていきます。
2017年10月
この時から、団体信用生命保険の保険料が金利に含まれるようになりました。以前のフラット35は、団体信用生命保険に加入する時は、毎年保険料を住宅ローンとは別で支払う必要がありました。
フラット35の見た目の金利は他の銀行の全期間固定の商品と比較して安く見えていても、団信保険料を含めると実質金利は高くなっていました。また、毎年保険料を支払うので、支払いを失念してしまい保険が失効してしまう人も出ていたことが問題になっていました。
しかし保険料が金利に含まれたことで、見た目の金利はもちろん高くなりましたが、実質金利は安くなりました。もちろん団信の加入は必須ではないため、健康に不安がある方でも住宅ローンを借りられるという、従来のメリットはそのままです。
また団信の内容も介護状態も対象になるようになり、より充実しました。
2018年4月
フラット35の融資対象はこれまで物件価格の9割まででした。金融機関によっては、残りの1割の部分も借りることは出来るのですが、その部分だけは金利が高くなってしまっていました。
しかし、この時の改正により、諸費用も含めて9割までと変更されたため、借り入れられる割合が実質的に増えたことになります。諸費用に含まれるのは、融資事務手数料・不動産仲介手数料・印紙代・登記費用・火災保険料などです。
中古マンションの場合だと、約97%くらいまでフラット35で借りられるようになります。この変更によって、より安い金利で多くの金額を借りられるようになりました。
またリフォーム資金も借りることが出来て、尚且つ金利引き下げが0.5%受けられるようになるという「フラット35リノベ」の適用条件が拡大されました。
細かい話なのですが、これまでの「フラット35リノベ」は適用条件が厳しすぎて全くといっていいほど使えませんでした。それが今回の変更でかなり使いやすくなることが予想されます。
2019年6月
フラット35の運営母体である住宅金融支援機構が保証型と呼ばれる仕組みを活用した、金融機関独自のフラット35が提供されるようになりました。
たとえば、物件価格と諸費用を合わせた総額の1割を自己資金と出せるのであれば金利優遇があり、さらに2割出せるのであればより金利優遇があるといったように、自己資金がある方に対して金利を優遇する商品が発売されました。
金融機関によって取り扱いの有無や、審査基準が変わってきます。条件によっては、10年固定に近い金利で全期間固定にできる場合があり、私も実務でよく使っています。
フラット35は属性要件が比較的緩い
そしてフラットの大きな特徴の一つが、通常の銀行と違い、物件の要件は比較的厳しいものの、人に関する属性要件は比較的緩いことです。例えば一般的な銀行の審査であれば、正社員で転職後間もないと借りにくいといった条件があったりしますが、フラット35にはありません。
正社員に限らず、派遣社員やパート・アルバイトでも、借りることが出来ますし、転職期間も問題になりません。極端な話ですが、年金ですら収入として見なすことが出来ます。非正規雇用であっても、安定した収入があれば住宅を購入することができるという可能性を拡げてくれる非常にありがたい制度なのです。
また自営業の方の事業借り入れも、通常であれば返済比率に組み込まれて審査が厳しくなるのですが、内容によっては返済比率に含まれないものもあり、通常の銀行より借りやすい傾向にあります。
この特徴があるからこそ、銀行が借りられない人が借りると言われてきた節があるのですが、今はその内容の良さから銀行で借りられる人でも借りています。
関連記事「【永久保存版】自営業者向け住宅ローン借り入れマニュアル」
フラット35が使えない物件とは
フラット35は、借りる人の条件が比較的緩い一方で、物件の条件は厳格です。
銀行なら通る人でも、物件が基準を満たしていなければ使えません。
中古マンションで引っかかりやすいのは、次の5つです。
床面積が基準に足りない
中古住宅の場合、共同住宅は30㎡以上、一戸建て等は50㎡以上が必要です(出典:住宅金融支援機構「中古住宅の技術基準の概要」)。
ワンルームや小さめの1Kは、この基準に届かないことがあります。
なお面積は登記簿上の面積で見ますので、広告の面積とは違うことに注意してください。
接道が2メートル未満
住宅の敷地は、原則として一般の交通の用に供する道に2メートル以上接している必要があります。
戸建てで問題になりやすい条件です。
再建築不可の土地は、ここで引っかかります。
住宅の規格を満たさない
2以上の居住室、炊事室、便所、浴室があり、独立した生活を営むことができるものであることが必要です。
風呂なしの物件や、他の住戸と設備を共用している物件は対象外になります。
耐震性の基準を満たさない
これが最も多い理由です。
建築確認日が昭和56年5月31日以前の住宅は、耐震評価基準等に適合する必要があります。
詳しくは次の章でお伝えします。
管理規約や長期修繕計画が整っていない
中古マンションの場合、管理規約が定められていること、長期修繕計画の計画期間が20年以上あることが求められます。
管理組合が機能していないマンションは、この時点で対象外になります。
つまりフラット35が使えるかどうかは、管理の状態を測る一つの目安にもなるということです。
フラット35は旧耐震の物件は使えない?
属性要件は比較的緩いと言われるフラット35ですが、物件については厳格な要件があります。銀行であれば、属性が良ければ貸すところでも、フラット35では物件の適用要件に合格していなければ、利用することは出来ないのです。
そこで中古マンションの、フラット35の適用要件をおさらいします。
| 基準項目 | 概要 |
| 接道 | 原則として一般の道に2m以上接すること |
| 住宅の規模 | 30㎡以上 |
| 住宅の規格 | 原則として2以上の居住室(家具等で仕切れる場合でも可)ならびに炊事室、便所及び浴室の設置 |
| 併用住宅の床面積 | 併用住宅の住宅部分の床面積は全体の2分の1以上 |
| 戸建型式等 | 木造の住宅は一戸建てまたは連続建てに限る |
| 住宅の構造 | 耐火構造、準耐火構造または耐久性基準に適合 |
| 住宅の耐震性 | 建築確認日が昭和56年6月1日以後であること (建築確認日が昭和56年5月31日以前の場合は、耐震評価基準などに適合) |
| 劣化状況 | 外壁、柱等に鉄筋の露出がないこと等 |
| 管理規約 | 管理規約が定められていること |
| 長期修繕計画 | 計画期間20年以上 |
この中で、住宅の耐震性を見てください。
「建築確認日が昭和56年6月1日以降」となっています。この建築確認日は、建築確認済証で確認をします。※確認済証が紛失しているマンションは、登記簿上の新築時期が、昭和58年4月1日以降となるので注意が必要です。
このことから、通説ではフラット35は旧耐震の物件は利用できないと言われています。ほとんどの不動産仲介業者はそう思っているんじゃないでしょうか?
しかしカッコ書きを見ていただくと、「建築確認日が昭和56年5月31日以前の場合は、耐震評価基準などに適合」と書かれています。この「耐震評価基準など」という文言がこの記事の核心の部分です。
フラット35で中古マンションの耐震評価基準の概要は以下のように定義されています。
(1) 構造形式がラーメン構造と壁式構造の混用となっていないこと。
(2) 平面形状が著しく不整形でないこと。
(3) セットバックが大きくないこと。
(4) ピロティ部分が偏在していないこと。
つまり、これらの要件を満たせば、物件によっては調査の結果、旧耐震のマンションでもフラット35の適合証明書が発行できるということになります。
物件検査が省略できる場合がある
フラット35を中古住宅で使うには、原則として物件検査を受けて適合証明書を取得します。
ただし、この検査を省略できる仕組みがあります。
中古マンションらくらくフラット35
住宅金融支援機構が、技術基準に適合していることをあらかじめ確認した中古マンションです。
該当するマンションであれば、物件検査を受けずに手続きを進められます。
対象のマンションは、機構の物件情報検索サイトで調べることができます。
管理計画認定マンション
新耐震基準に適合する管理計画認定マンションについては、書類を金融機関に提出することで物件検査を省略できます。
管理計画認定制度は、管理組合の運営状況が一定の基準を満たしていることを自治体が認定するものです。
管理がしっかりしているマンションほど、手続きも簡単になるということです。
裏を返せば、管理の状態が悪いマンションは、住宅ローンの選択肢まで狭くなります。
そのマンション、管理は大丈夫ですか
管理組合の財政は、重要事項調査報告書や総会議事録にしか書かれていません。物件情報サイトを見ても出てきません。
- 重要事項調査報告書をアップロードするとA〜E判定が出る
- 将来修繕積立金がいくらまで上がるかが分かる
- 積立金の残高・滞納・借入・長期修繕計画の中身まで見る
登録は無料です。診断を実行したときに、初めて料金がかかります。
そもそもの話になりますが・・・・
この記事を読んでテンションがあがった人もいるかもしれませんが、正直なところ当社としては安全性や資産価値の観点から、旧耐震の中古マンションについてお勧めしていません。
安全性はもとより、将来の資産価値にやや懸念を感じるからです。もちろん耐震改修工事がなされているなど、問題のすくないマンションも存在します。しかし基本スタンスとしてはおススメはしません。
ただ、よほど立地がいいことや、お勧めしない理由を理解した上であえて選ぶという方もいらっしゃると思います。
最終的には人それぞれの価値感によるところなので、もしフラット35の利用を予定されている方で、旧耐震の中古マンションを検討するのであれば、ぜひ参考にしていただければと思います。
よくある質問
フラット35が使えない物件はどんな物件ですか?
床面積が基準に足りない、接道が2メートル未満、住宅の規格を満たさない、耐震性の基準を満たさない、管理規約や長期修繕計画が整っていない、といった物件です。
借りる人の条件ではなく、物件の条件で落ちるのがフラット35の特徴です。
旧耐震のマンションでフラット35は使えますか?
使える場合があります。
建築確認日が昭和56年5月31日以前の住宅は、耐震評価基準等に適合する必要があるとされています。
この基準を満たせば適合証明書が発行され、フラット35を利用できます。
「旧耐震だから無理」と決めつけている担当者は少なくありませんので、確認してみてください。
建築確認日はどこで分かりますか?
建築確認済証で確認します。
確認済証が見当たらないマンションの場合は、登記簿上の新築時期が昭和58年4月1日以後であるかどうかで判断されます。
適合証明書は必ず必要ですか?
原則として必要ですが、中古マンションらくらくフラット35の対象マンションや、新耐震基準に適合する管理計画認定マンションであれば、物件検査を省略できます。
フラット35は審査が緩いのですか?
人に関する条件は比較的緩やかです。
派遣社員やパート、アルバイトの方でも利用でき、転職して間もない場合も問題になりません。
一方で物件の条件は厳格ですので、緩いというより「審査の見るところが違う」と理解してください。
いまフラット35を選ぶ意味はありますか?
2024年3月のマイナス金利解除以降、政策金利は引き上げられています。
変動金利はこの動きに連動しますので、返済額が変わらないことの価値は以前より大きくなっています。
金利が1%上がったときの返済額に耐えられないのであれば、全期間固定は有力な選択肢です。
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宅地建物取引士、2級FP技能士、ホームステージャー2級
ハウスクローバー株式会社、スタイルイノベーション株式会社の創業者兼CEO。また同時に、毎年全国から2〜300組ほどの住宅購入希望者の相談があり、実際の購入もサポートする現役の不動産エージェントでもある。業界歴は17年。多くの人から受ける相談内容と不動産業界の現状にギャップを感じ、住宅購入に必要なサービスと優良な不動産エージェントのネットワークを構築したプラットフォーム「HOUSECLOUVER」を企画運営している。自身が情報を発信しているYoutubeやブログは多くの住宅購入者にとって欠かせないバイブルとなっている。
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