税制、その他制度

【住宅購入】消費税増税で何に気を付ければいい?


2019年は、新しい元号へ変わり、消費税増税という大きな変換点を迎えました。

さまざまな業界に影響を与えている今回の10%への消費税増税ですが、住宅をはじめとする不動産市場へも、8%の増税時ほどではないにしろ、それなりに大きな影響を与えています。

2014年4月に8%に増税された時は、増税前に少しでも安い価格で住宅を購入しておこうと、駆け込みが発生しました。駆け込みによって取引量が増え、市場価格も上昇しましたが、その後は反動により需要減となってしまいました。

そこで政府はその時の反省を活かし、さまざまな対策を立てました。端的に言えば、消費税の増税前と増税後であまり差がつかないようにしたのです。

しかし、もちろんいいことばかりでなく注意点もあります。そこでここでは、消費税増税後に住宅を購入するにあたって気を付けていただきたいポイントについてお伝えします。

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消費税がかかるものとかからないもの

まず初めに不動産取引においては、そもそも消費税がかかるものと、かからないものがあります。

よく一律でかかるようにお考えの方もいらっしゃいますが、消費税がかかるものとかからないものを知っておくことがポイントになります。

消費税がかかるもの 消費税がかからないもの
  • 新築住宅(建物のみ)
  • 売主が法人の中古住宅(建物のみ)
  • リフォーム代金
  • 建築請負代金(注文住宅)
  • 仲介手数料
  • 司法書士への手数料
  • 銀行への事務手数料
  • 土地
  • 個人が売主の中古住宅
  • 収入印紙
  • 登録免許税
  • 不動産取得税
  • 住宅ローンの保証料
  • 火災保険、地震保険料

こちらの表を見ると、不動産取引といってもずいぶん消費税の取り扱いが違うことが分かると思います。

これらを総評すると、売主が個人であることが多い中古住宅や中古マンションよりも、新築住宅や注文住宅などへの影響が大きいということになります。

こういった事情から前回の消費税増税時には、かなりの駆け込みが発生し、建築業者の職人もひっ迫し、価格が高騰しました。その反省を活かして、政府が打ち出した方針の一つに、住宅ローン減税の延長があります。

住宅ローン減税が3年延長に

2019年10月に控える消費税増税に対して、政府は消費税増税前と後のどちらでもあまり変わらないようにと考えました。そこで考えられたのが、住宅ローン減税の3年間延長です。

住宅ローン減税とは、現在は年末時点の住宅ローン残差額の1%、最大で年間40万円(認定住宅等は50万円)が、支払った税金(所得税・住民税)から戻ってくるという制度です。

「消費税が増税されても住宅ローン減税で戻ってくる金額が増えるので、トータルではそんなに変わらないよね」ということですね。

ちなみに住宅ローン減税や住まいの給付金など、消費税増税対策についてはあくまで消費税がかかる物件のみ対象になります。

そもそも消費税がかからない中古住宅(個人売主)の取引については、従来通りになります

ココがポイント

個人が売主の中古住宅においては、住宅ローン減税は10年間で最大200万円です。また適用される物件にも条件がありますので、注意が必要になります。

消費税増税前と増税後の住宅ローン減税の比較

居住の用に供した 適用される消費税率 年末時点での住宅ローン残債額限度 最初の10年間の住宅ローン減税 11年目から13年目までの住宅ローン減税
2019年9月30日以前 8% 4,000万円(認定住宅等5,000万円)
非課税の住宅(売主個人)は2,000万円
1% 11年目以降の住宅ローン減税は無
2019年10月1日~2020年12月31日* 10% 1% 「住宅ローンの年末残高×1%」か「建物価格×2%÷3」の低い方

※2019年3月31日までに契約した場合は、2019年10月1日以降の入居でも消費税8%が適用されます。

消費税10%が課税される取引の場合、2019年10月から2020年12月末までに居住開始すれば住宅ローンの減税が3年延長されます。

ココに注意

増税後もずっと延長されるわけではなく、2020年12月末までになります。時期にして15か月と、比較的短いです。増税後が「得」と考えていて方やこれから住宅取得を検討する方は、ひとまず2020年12月末を一つの目安にされるといいと思います。また「居住の用に供した」とは基本的に住民票で判断されます。

住宅ローン減税が3年延長されますが、最初の10年間の住宅ローン減税と同じく、「住宅ローンの年末残高×1%」か、消費税の増税分ともいえる「建物価格×2%」を3年で割った金額の低い方が適用されます。

住宅ローンの残債額にもよっては、消費税増額分しか減税を受けることが出来ない場合もあります。というよりもむしろそういったケースの方が多いかもしれません。

住まいの給付金の拡充

消費税拡大後は、「住まいの給付金」の拡充されます。

住まいの給付金は、2014年4月の消費税増税時に、住宅ローン減税の拡充(限度額が年間20→40万円)だけでは、所得が低く、納税額が少ないと住宅ローン減税が控除しきれないことがあることから導入されました。

所得が低く、住宅ローン減税の拡充ではその恩恵を享受しきれない人用の制度だったこともあり、利用できる方も限られていたのですが、今回の拡充により対象となる人が増えそうです。

消費税8%

収入の目安 給付額
425万円以下 30万円
~475万円 20万円
~510万円 10万円

消費税10%

収入の目安 給付額
450万円 50万円
~525万円以下 40万円
~600万円以下 30万円
~675万円以下 20万円
~775万円以下 10万円

年収が775万円以下であれば、住まいの給付金を利用できるようになったので、利用件数も増えると思います。

ちなみに「住まいの給付金」の制度は2021年末までとされています。

ココに注意

住まいの給付金を受け取るためには、住宅性能評価書や住宅瑕疵保険への加入が必須です。対象になる住宅であっても、これらの書類を予め取り付ける必要があるため、売主もしくは不動産仲介業者へ依頼するのを忘れないようにしましょう。特に中古住宅・中古戸建の場合は取得の難易度は高いです。

「次世代住宅ポイント制度」の新設

今回の消費税増税に合わせて新設された制度が、「次世代住宅ポイント制度」です。

これは、エコ住宅や耐震性能など、一定の性能を備えた住宅を新築・リフォームを行うともらえるポイントです。

このポイントは様々な商品などと交換できるようになっています。

ポイントは一戸あたり最大35万円分で、具体的な商品等は公募による決まります。

住宅取得時の贈与の非課税枠が拡大

さらに、住宅取得の資金贈与についても限度額が拡大されました。

父母や祖父母などの直系尊属から、自分が住み住宅用を取得(新築・リフォーム含む)に充てる資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば、限度額までは非課税ですみます。

現行の制度では700万円(省エネ等住宅では1200万円)ですが、2020年3月までに契約し、消費税率10%が適用される場合は、2,500万円(省エネ等住宅では3,000万円)まで拡大されます。

※省エネ等住宅とは、一定の耐震性能・省エネ性能またはバリアフリー性能等を有する住宅のことをいいます

弊社のお客様でも、数は少ないですが、現行の制度を超える贈与を行うときは、登記名義人として、資産を圧縮し、相続税額を減らすという手法等でしか対応できませんでしたが、これによりほとんどの方は非課税枠内に収まるのではないでしょうか。

一定条件とは以下のようなものになります。

  • 贈与者の子もしくは孫で20歳以上であること
  • 年間の合計所得が2,000万円以内であること
  • 贈与を受けた年の翌年3月15日までに自分が住む家であること
  • 床面積が50㎡以上、240㎡以下であること(登記簿面積)など

住宅取得資金贈与

家屋の取得日に関する契約日 省エネ等住宅 一般住宅
消費税率10% それ以外 消費税率10% それ以外
2016年1月1日~19年3月31日 1,200万円 700万円
~2020年3月31日 3,000万円 1,200万円 2,500万円 700万円
~2021年3月31日 1,500万円 1,000万円 1,000万円 500万円
~2021年12月31日 1,200万円 800万円 700万円 300万円

ココがポイント

消費税増税後、比較的早い方が非課税枠が大きいです。贈与を活用して住宅購入をお考えの方は、なるべくこの時期に住宅を購入するとメリットが大きいかと思われます。

ココに注意

住宅取得時資金の贈与の非課税枠の適用要件については、中古住宅は住宅ローン減税が適用される物件の条件を満たす必要があります。なお、ここでの住宅ローン減税は3年延長が使えるかどうかではなく、住宅ローン減税そのものが利用できるかです。

増税前と増税後、どちらが住宅購入に得だった?

増税前と増税後で、どちらが住宅購入にとって得だったかどうか、気になる方もいらっしゃるかもしれません。そこでここでは、両方のケースを比べてみたいと思います。

中古住宅(売主個人)の場合

このケースでは、増税前と増税後では変わりません。

ただし、諸費用であったりリフォーム費用には消費税がかかるので、中古住宅の場合は増税前の方がどちらかと言えばお得であったと言えます。

とはいえ、物件にもよりますが、そこまで差が大きくなるわけではないので、特に気にする必要はないように思います。

新築住宅・中古住宅(売主業者)の場合

例えば、新築住宅を購入して住宅ローンを4000万円で借りた場合を想定します。

Aさんの例
住宅 建売新築戸建て
(建物2400万円、土地2,600万円)
住宅ローン 4,000万円、35年返済、金利1.4%
元利均等返済、ボーナス払いなし
※住宅ローンは夫の名義のみ
  • 夫:会社員(年収700万円)
  • 妻:パート(年収100万円)
  • 子供は、7歳と6歳

Aさんは、5,000万円の建売の新築戸建て(一般住宅)を、頭金1,000万円、住宅ローン4,000万円で購入します。

このケースで増税前に買った方が得なのか、増税後に買った方が得なのかシミュレーションしてみたいと思います。

まず増税前に購入した場合は、住宅ローン減税が10年間で約348万円受けられます。

増税後に購入した場合は、増税分で建物の消費税が2%(48万円)増えます。

一方住宅ローン減税は396万円で、住まいの給付金は10万円受けられます。

両者を比較すると以下のようになります。

消費税 8% 10%
住宅ローン減税 約348万円(10年間) 約396万円(13年間)
住まいの給付金 0円 10万円
増税分 ▲48万円
合計 約348万円 約358万円

これはあくまで一つの例にすぎませんが、このケースであれば、増税後に購入した方が「10万円の得」ということになります。

ただし、購入にかかる諸費用やリフォーム費用が大きければ、10万円くらいであれば逆にマイナスになることもあります。(次世代住宅ポイント制度の適用可否によってさらに結果は変わる)

ただし、仮に1,000万円の自己資金が贈与であった場合、

消費税 8% 10%
贈与税 19万円※ 0円

※1,000万円ー700万円(住宅取得時の非課税枠)-110万円(暦年課税)×10%
※贈与税は基礎金額が上がれば上がるほど高率になる累進課税となります。

贈与予定額が810万円をこえる場合は、増税後の方が有利になることの方が多いと思います。

人によってケースバイケースですが、実は増税前でも増税後でもそこまで大きく変わりません。

こういったこともあり、増税前にそこまで大きな駆け込みは実際に発生はしませんでした。よく考えられた制度だと感じました。

消費税増税で何に気を付ければいい?

それでは最後に、今回の消費税増税で気を付けることはなにか?それはズバリ「時期」です。

ここまでに説明してきた増税対策はどれも期限付きとなっています。ここに書いてある時期を過ぎてしまうと、増税分がそのまま負担増となります。

また時期についても、契約の時期でいいのか、それとも住民票の異動日なのか、など制度によって変わってきます。

後になって慌てないよう、前もって準備していくことが重要なポイントになります。

エージェントの役割がますます大きくなっていく

エージェントとは不動産仲介業者の担当者のことをいいます。

これまでに説明してきたように、住宅購入にかかわる制度は年々複雑さを増してきています。

しかも金額が大きいだけに間違えは許せません。しかし現実には、これらの制度をめぐるトラブルは数多く発生しています。

損か得を見極めることも大事ですが、それ以上にあなたの家探しをサポートしてくれる不動産エージェントをしっかり探すことの方が、家探しで失敗してしまうリスクを大幅に減らせるのではないでしょうか。

不動産会社や担当者の選び方は、こちらの記事をご覧ください。
⇒ https://www.style-innovation.com/hudousan-kaisha-dokogaii/

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  • この記事を書いた人
宮田明典(スタイルイノベーション株式会社)

宮田明典(スタイルイノベーション株式会社)

スタイルイノベーションの代表であり、不動産業界歴10年以上のトップエージェント。 購入者側の仲介業者であるバイヤーズエージェントとして多くの顧客から指名買いを受けている。 現在は、全国の担当者(不動産エージェント)が探せるサイト「HOUSECLOUVER(ハウスクローバー)」を企画・運営。

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