昨今のITの発達により住宅産業も大きく変わってきました。
物件情報がネット上で簡単に手に入るだけでなく、最近は玄関ドアに特殊な機械を取付け、スマートフォンに送られてきた鍵で開け閉めが出来るシステムまで登場しました。
しかも比較的低価格で。
これにより、例えば物件の内覧に行くときに、仲介業者がいなくてもよくなります。
特に賃貸物件での採用が増えそうで、「ITによって消える仕事」ではないですが、存続そのものに疑念も浮かびます。
そこで今回は不動産仲介業者の今後や意義について考えてみたいと思います。
また当記事では賃貸仲介でなく売買仲介業者のみに絞らさせていただきます。
物件情報の紹介だけがすべてではない
一昔前であれば不動産会社に行かなければ物件情報にありつけませんでした。
しかし、最近ではインターネットが発達し、住宅に限って言えばほとんどネットに載っている時代です。
しかも今後は売主が直接インターネットに物件情報を掲載する時代が来るかもしれません。
現に昨年からソニー不動産がヤフーと組んで、自分で物件を売りだせるサービスをスタートさせました。
新たな囲い込み行為だと、色々非難の声(同業者が多い)もありますが、本当の気持ちは、将来自分たちの仕事がなくなってしまうのではないかという不安からではないかと考えてます。
どうも、「不動産会社=物件情報の紹介」という認識になっているのではないでしょうか。
事実、不動産仲介業者は物件情報の紹介にかける時間が多く、契約までが仕事の大半という会社も多いです。
こういう考え方をしていたら、ITによって仕事がなくなるのではないかと考えるのは必然的かもしれません。
消費者でもこういった認識を持たれている方も多いのではないでしょうか?
SNSの普及など、誰もが手軽に情報を発信することができるようになった現在、物件の入手経路は何も不動産仲介業者に限らない。
その行く末にあまり光明が見えなくなりつつあるのではないでしょうか。
求められる不動産仲介業者の役割
それではこんな時代に求められる不動産仲介業者の役割とは何でしょうか?
私の考える不動産仲介業者の役割とは、不動産取引を安全に進めるようにすることです。
安全に進めるということは取引後に「こんなはずではなかったのに・・・」とならないように、「目に見えないもの」「見ても分からないもの」「気付かないもの」を把握しているして伝えることです。
この3点は当事者に不測の不利益を被らせてしまう可能性が高いからです。
実際に中古住宅を購入して後悔・失敗したという理由でよく聞くのは
「住んでみたら欠陥住宅だった」
「不動産会社やリフォーム会社がいい加減だった」
「期待していた住環境と違った」
「リフォームやメンテナンスに想定外の時間とお金がかかった」
「保証やアフターサービスがなかった」
などがあります。
しかし、不動産仲介業者が気付いていたら全部防げることです。
たとえ浸水記録など、宅建業法上、義務の無い項目でもプロとして明示を怠ることがあってはいけません。
不動産仲介業者は無くならない?
ここでこの記事のタイトルに戻って考えてみます。
ITが発達して「物件情報の紹介」が不動産仲介業者の仕事でなくなったとしても、不動産仲介業者は無くならないと考えています。
中古住宅とはその商品の性質上、生涯において購買活動を何度もするものでもなく、不動産取引について知らない消費者が大半です。
また知っていたところで、消費者自身がやろうとしてもなかなか出来るものでもありません。
こういった取引を安全に進めていくためのサービスは、不動産仲介業者でなくてはならないものになる可能性が高く、不動産取引の中で仲介業者の存在感はより高くなっていくものと考えております。
実際、不動産のテクノロジーが世界で最も進化しているアメリカにおいても、完全にWebだけで完結できるサービスはあるものの、既存の不動産業者の存在を脅かすほどの存在にはなれていません。
やはり大きな買い物で失敗が許されない取引だからこそ、多少コストがかかったとしても、不動産業者を使うメリットを感じているのではないでしょうか。
ただし、付加価値を提供できない「物件紹介が主な業務」な不動産仲介業者は今後淘汰されていくのではないかと思います。これから求められるのは、安全な取引はもちろんのこと、より一歩進んだ価値を提供できる不動産業者なのではないでしょうか。
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